セクハラとは、男女雇用機会均等法では、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したり抵抗したりすることによって解雇、降格、減給などの不利益を受けることや、性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること」としています。
「イケメンが行ったらただのスキンシップだけど、おじさんが行ったらセクハラ?」よく冗談で言いますが、「イケメン・・・」の判断は別にして、相手に不快な思いをさせる性的な言動でもセクハラとされる例もあります。女性だけではなく男性へのセクハラもあります。
厚生労働省の指針ではセクハラを次の2つのタイプに分けています。
1,対価型セクシュアル・ハラスメント
職務上の地位を利用して性的な関係を強要し、それを拒否した人に対し減給、降格などの不利益を負わせる行為。
<たとえば>
●事業主が性的な関係を要求したが拒否されたので解雇する
●人事考課などを条件に性的な関係を求める
●職場内での性的な発言に対し抗議した者を配置転換する
●学校で教師などの立場を利用し学生に性的関係を求める
●性的な好みで雇用上の待遇に差をつける
など
2,環境型セクシュアル・ハラスメント
性的な関係は要求しないものの、職場内での性的な言動により働く人たちを不快にさせ、職場環境を損なう行為。
<たとえば>
●性的な話題をしばしば口にする
●恋愛経験を執ように尋ねる
●宴会で男性に裸踊りを強要する
●特に用事もないのに執ようにメールを送る
●私生活に関する噂などを意図的に流す など
セクハラは男女雇用機会均等法に、「事業主に対し防止措置を講じることが義務付けされ、行為者への厳しい処分、処分内容を就業規則に記載することが必須となりました。」これにより勧告に従わない企業の公表も規定されています。最近は賠償請求を求める裁判も頻繁に起きており、注意する事項です。
<セクハラに関して、事業主が講ずべき措置/男女雇用機会均等法>
1.事業主の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に対してその方針を周知・啓発すること
2.相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること
3.相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者及び行為者に対して適正に対処する
とともに、再発防止に向けた措置を講ずること
4.相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理
由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
就業規則への記載
上記を就業規則へ記載することが最も有効な方法です。またセクハラを行った場合の懲戒処分まで記載することが必要です。
セクハラへの対応は法律上の話ではありますが、セクハラが行われた場合、企業にとっても下記の視点で大きな損失となります。
1,モチベーションの低下
セクハラ行為は職場環境を悪くして、結果として働く人たちのモチベーションを低下させてしまします。それが生産性の低下へとつながります。
2,企業イメージの悪化
セクハラは企業イメージを著しく悪化させます。行政の是正勧告に応じない場合公表もありますが、セクハラ行為は企業によっては致命的なダメージとなります。
3,離職率の増加
上記の結果としては離職率の増加等の影響が出てきます。特に優秀な人たちの人材流出が行われます。
4,直接損失
近年はセクハラ相談や裁判が増加してますが、当然のことながら裁判費用や損害賠償請求等の直接損害も発生します。
<事件の概要>
加工食品等の製造販売等を目的とする被告会社の「商品開発チーム」の飲食会が会社主催で開催され、原告(女性)を含むチームのメンバー17名と、会社の専務取締役A(男性)など4名の管理職が参加した。原告とAを含む4名は、その後三次会まで行き、午前1時ころ、原告とAがタクシーに同乗し帰途についた。 その車内で、Aは、原告の体を押さえ付け、執ようにキスをしたほか、「エッチしよう。」と言葉をかけるなどのセクハラ行為をした。タクシー下車後、原告は、直属の上司に電話でこのセクハラ行為を訴え、また、精神的ショックから欠勤するようになった。 原告は、被告会社では安全に勤務することができないと判断し、約半年後に退職し、A及び被告会社に対し、慰謝料等の損害賠償を請求した。
<判決の要旨>
Aのセクハラ行為は原告の性的決定権の人格権を侵害するものであるとして、Aの不法行為(民法709条)の成立を認めた。 また、被告会社についても、①一次会は被告会社の職務として開催されたこと、②二次会は一次会の最高責任者であるAの発案で、一次会の参加者全員が参加していること、③Aは原告に対し三次会についてくるよう声をかけていること、④三次会に参加したのはいずれも会社の従業員であり、職務についての話がされていることなどから、Aのセクハラ行為は、会社の業務に近接して、その延長において、上司としての地位を利用して行われたものであり、被告会社の職務と密接な関連性があり、事業の執行につき行われたというべきであるとして、使用者責任(民法715条)の成立を認めた。
東京地裁 平成15年6月6日判決 法務局リーフレットより