誰を雇うかは企業に認められている大きな権利です。これが企業の成長の原動力になることです。一方それでは採用に関して何でもやってもいいわけではなく、採用時にはいくつかの制約があります。
法的には、まず、性別による採用差別が禁止されています。(均等法5条)また、年齢を採否基準に用いることも禁止されています。(雇対法10条)労組法7条1号は、労働組合非加入を雇用の条件にすることを禁止しています。障害者雇用促進法34条においては、募集・採用における障害者に対する均等な機会の付与が定められています。
公平なルールに基づき、基本的人権を尊重し、応募者の適正・能力に基づいて選考をおこなうことが重要です。この考えが良い採用活動に結びつくものと思われます。
厚生労働省の「採用選考時に配慮すべき事項」を紹介します。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出さ
せることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の
有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可
能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
これは「配慮すべき事項」とのことば使いにしろ、現実としてもかなり微妙です。人として正しい行動をすることでしょうか。
これは○×では答えられない、ナイーブな事柄です。
1,業務上必要であれば聞くべき(安全配慮)
自動車運転など既往症が大きなリスクを伴う場合、重要な項目となり得ます。ただその場合、業務遂行可否や業務遂行上のリスクを把握するために必要な質問であることを応募者に伝え、本人の同意を得た上で病歴を聞く、といったことが必要です。
2,充分な配慮が必要
聞く内容は「業務に必用な範囲に限定する」「守秘義務を守る仕組みを作る」「チェックシートの活用」等の配慮は必須です。
3,労働基準監督署の見解
北海道労働局で、下記のようなコメントがありました。
『労働安全衛生規則第43条に「雇入時の健康診断」が規定されていることを理由に、採用選考時において一律に血液検査等の「健康診断」を実施する(「健康診断書の提出」を求める)事例が見受けられます。
しかし、この「雇入時の健康診断」は、常時使用する労働者を雇い入れた際における適正配置、入職後の健康管理に役立てるために実施するものであって、採用選考時に実施することを義務づけたものではなく、また、応募者の採否を決定するものでもありません。
採用選考時における血液検査等の「健康診断」は、応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、結果として、就職差別につながるおそれがあります。
したがって、採用選考時における「健康診断」は、その必要性を慎重に検討し、それが応募者の適性と能力を判断する上で合理的かつ客観的に必要である場合を除いて実施しないようお願いします。なお、真に必要な場合であっても、応募者に対して検査内容とその必要性についてあらかじめ十分な説明を行った上で実施することが求められます。』
⇒参照